一般社団法人 茗渓会

筑波大学同窓会
筑波大学/東京高等師範学校/東京文理科大学/東京農業教育専門学校
/東京体育専門学校/東京教育大学/図書館情報大学/図書館短期大学
2013年10月15日掲載

公開講座「この秋楽しむ宿根サルビア(講師・西川綾子さん)」を開催しました(更新:講演録を追加)

西川綾子さん

茗渓会の公開講座「この秋楽しむ宿根サルビア」が12日、東京・茗渓会館にて開催されました。講師は、水戸市植物公園園長の西川綾子さんです。

当日の講座は、西川先生がたくさんのサルビアの鉢を会場に持って来られ、実物を示しながらサルビアの魅力を語られました。中南米を中心に世界に900種以上も種類があるというサルビアのうち、約30に及ぶいろいろなサルビアを、水戸市植物公園での栽培や花壇づくりのお話しをまじえながら、映像で紹介して頂きました。ついで、年間の育て方のポイントや摘芯の仕方、肥料や土の選択など、実際に即したお話しがあり、参加者は熱心にメモを取っていました。

参加者からは、「先生の、植物に対する愛情を感じ、心温まる気持ちでした。」などの感想の声を寄せられました。

講演録

公開講座「秋に楽しむ宿根サルビア」
講師 水戸市植物公園長 西川 綾子(茗渓会理事)

10月12日(土)に、秋咲きのサルビアをテーマに茗渓会館で講座を行ったのでその内容をご紹介します。

サルビアの概要

みなさんはサルビアという植物はご存じでしょうか?夏に咲く赤い花、花に甘い蜜がある、幼い頃に花の蜜を吸った思い出があるなどのイメージがある草花ですが、実はオーストラリアを除き、世界に900種類が分布している大変種類が多いシソ科アキギリ属の植物です。

ラテン語のsalvus(意味は健康、救う)がサルビアの語源であることから伺えるように薬用になる種類があり、歴史的に有名な種類が、サルビア オフィキナリスです。英名のセージと言った方がわかりやすいかもしれません。

また江戸時代に発行された「本草図譜」にも、中国原産のS.ミルチオリザ(タンジン)が薬草として紹介されています。現代ではメキシコ現住のインディアンが占いの儀式に葉を使うため「占い師のセージ」と言われるS.ディビィノルムが強い幻覚作用があるため薬事法の指定植物となり、取り扱い注意のサルビアとなりました。

様々な種類のサルビアがありますが、観賞価値が高いメキシコ、ブラジル、ペルーのほか、ヨーロッパ、アフリカ原産の種類と特性などを紹介しましたが、図鑑を見ているような話になるので、参加者はよっぽど花が好きな方じゃないと眠かったかもしれません。

短日性のサルビア

さて、サルビアの中には日が短くなった秋に開花するタイプがあります。私の職場では8月半ばから夕方5時になると遮光ネットを被せて暗くさせ、翌朝8時にネットはずす短日処理を行って、自然開花よりも早く花を咲かせています。開花時期が早くなるだけではなく、脇芽の発達も促せて一度に花が咲くので、この技術は展示会に適しています。10月上旬から花を楽しめる短日性のサルビアにはレウカンサ、エレガンス、マドレンシスなどのサルビアがあります。

一方、10月に満開にさせるため開花を遅らせている種類もあります。コバルトセージの英名があるレプタンスです。自然開花では8月下旬から咲いてくるので、花芽が見えると先を摘み、また花が咲きそうになると摘む、これを3回ほど繰り返せば、摘心作業を3回行ったことになり花数も増えて満開時には花いっぱいになります。

サルビア栽培のポイント

年間を通じたサルビアの栽培管理のポイントですが、日当たりの良い場所に置き、根詰まりさせないで、生育時期は肥料をきらさないことがポイントです。

春は宿根性の植替え時期で、根づまりした株を片手で持てるくらいの大きさに分け、新しい用土で植え直します。微塵を抜いた赤玉土(小):腐葉土:堆肥=6:2:2などの用土は排水が良く使いやすいです。新芽が発生してきたら、油かすや骨粉などの有機質肥料を施し肥培管理に努めます。5?6月は伸びた枝を8cmくらいに切って、挿し芽をします。切り口を鋭利なナイフで切り、雑菌が入って挿し穂が腐らないよう、清潔な用土に挿すことです。温度が20℃あれば2週間ほどで発根します。根の長さや量に応じて鉢上げする鉢の大きさや、1本植えにするか3株まとめて植えるかを決めます。根が出たからといって、すぐに大きな鉢に植えると用土が多い分、水分量が多くて根の伸び方が悪くなります。用土が多い時は3本を三角形に配置させて植え、鉢いっぱいに根が張ってから、大きな鉢に植え替えます。

晩秋には冬の準備を始めます。ブラジルやペルー原産の種類は寒さに弱く、温室などの室内で冬越しさせます。メキシコ原産の多くは、根を凍らせないように工夫すればその土地に慣れ、屋外での越冬が可能になります。11月に落ち葉を株元に厚さ30cmほど厚めに敷いて、霜よけをすることです。マドレンシスの芽が吹いてくるのは5月下旬くらいなので枯れてしまったと早とちりせず、6月の新芽が吹いてくるのを待ちましょう。

日本のサルビア

ところで意外に思うかもしれませんが日本にもサルビアが自生しています。学名がS.nipponicaという日本のサルビアの代表といえるのがキバナアキギリです。茨城県にも自生しています。一方、紫や桃色などの花が咲くアキギリは茨城県には自生せず北陸や岐阜、近畿地方に自生します。岐阜や福井近辺では両種の中間種が確認でき、観賞価値が高い美しい花がみられます。自生地は木漏れ日のやさしい日差しで近くでは水がわき出て、湿った風が通る場所ですから、少々日当たりが悪い場所でも機嫌良く花が咲いてくれます。これからのガーデニング素材として注目したい日本の気候にあったサルビアです。

最後に水戸から持っていった珍しいサルビアの苗を、直接みなさんに見て頂きました。入手を希望する声が高く実費でお分けしましたら、大変喜ばれました。茗荷谷近辺でガーデンショップは見あたりませんから、生きた教材を準備することは、都内では特に大切なことに思える講座でした。

関連ページ