去る11月16日(日)に、第2回となった東京都茗渓会(以下、都茗渓会)の総会・講演会・交流会が筑波大学文京キャンパス並びに茗渓会館において70名を超える参加を得て開催されましたのでご報告いたします。
一、 開会までの流れ
昨年の第1回は、東京都にある28の地域支部の中で葛飾と新宿支部以外は活動が近年停滞していることを受け、活動を活性化するための切り札として(文科省や都庁等の)職域支部を除いた地域支部を一本化して東京都全体で都茗渓会としてまとまるために開催されました。今回はその発展形としての開催です。
二、 総会
当日は爽やかな秋晴れの一日で、総会は先輩方には懐かしい茗荷谷駅前の教育大跡地に新設された筑波大学文京キャンパスを会場に行われました。教育大時代からの木々が大木となって大事に残されているキャンパスですが、校舎は2年前に新設されハイテクな校舎に様変わりしています。
渡邉悟副会長(食医同源の会代表)の開会の辞に続き、高橋基之会長(都立目黒高校長)から開催趣旨を踏まえた挨拶がなされました。
その後、ご来賓として茗渓会理事長・江田昌佑様、筑波大学副学長・阿江通良様からご挨拶をいただきました。江田理事長からは、新たに一般社団法人となった新茗渓会のミッションや最近の様子についてのお話があり、阿江副学長からは国内スーパーグローバル大学13の中の一つに選ばれ、世界トップクラスを目指すトランスボーダー大学としての筑波大学の戦略についてのご講話を頂きました。「師魂理才の人材」を育てると言う初代校長加納治五郎先生が英語や独語をも話された国際人としての見識を持って人材育成を進めてこられたことを継承しようとのことでした。
総会議事では、25年度並びに26年度活動・会計が承認されました。特に26年度からは茗渓会本部からの支部還元金(年会費の1割350円/人×会費納入会員1,100名分)約40万円が還元されたことから、これを原資にして活動する旨の説明がありました。さらに、26年度から従前の地域支部の支部長25名を幹事として新たに役員に迎え入れる提案がなされ承認されました。
三、 記念講演
「ロボットスーツHALが創る未来」をテーマとして筑波大学システム情報系教授山海嘉之先生の「ゆめ」あふれる講演が行われました。
山海先生は国の政策委員として、さらにはご自身で起業された官民学融合型のサイバーダイン社CEOとしても世界的に有名な方で、1年前から講演の予約依頼をしてようやくかないました。それだけに「山海先生の講演を楽しみに来ました」という方の来場も多数ありました。
柳久美子副会長(文教大学付属幼稚園長)の講師紹介によると、山海先生は小さい時からロボットがお好きでアイザック・アシモフが書いた「われはロボット」が愛読書であったとのこと。
山海先生は「サイバニクス」と言う未来開拓型の新しい学問領域を開発されました。「人間・機械・情報系が融合複合された領域」です。さらに、法律や倫理、経営等とも連携したまさに学際的な領域です。
山海先生が開発された「ロボットスーツHAL」は、着用者の意志を読み取り自律的に動く着用ロボットです。重介護の方がHALを着用してリハビリをすると、例えば歩けなかった人が数か月で階段を登れるようになるなど著しく機能の改善が見られます。HALがリハビリと介護を支援してくれます。HALは着用者の失いつつある機能を改善再生し、「重介護ゼロ社会」の実現につながるものと言えます。何となれば2050年には我が国の高齢者は65%になり、本格的「老々介護の時代」がやってくるからです。さらに、先生は「開発には原理の理解が大切で、創造には原理と原理の組み合わせが必要である」と力説されました。単に表面的な技術を追いかけているのではなく、しっかりとした哲学をもって開発に臨んでいる姿を感じました。
最後に、真当哲博副会長(株・学研教育出版取締役)から「先生の研究は人間のことを真に考えたもの、まさに人間賛歌ですね」と謝辞が述べられました。
四、 交流会
交流会は、会場を茗渓会館に移して行われました。
山海先生のご発声により高らかに乾杯が行われました。司会は浅井一郎会計(有テイー・エー・オー企画代表取締役)の実に流暢な言葉にのって会は和やかに進行しました。さらに、今回の料理は同窓生の経営する会社からのケータリングで、とても沢山で食べ切れないくらい豪華な料理でした。
途中「筑波大学の酒・桐の華」が紹介されました。この酒は、今年退官された生命環境科学研究科・内山裕夫教授の研究室において本物の「桐の花」から分離された桐の花清酒酵母を使って醸造した純米吟醸酒で、辛口と香味と旨味にバランスのとれた日本酒であるとの宣伝が行われました。(私は内山研究室の卒業生であることからついつい宣伝に力が入ったしだいです。)
お酒が入り会も盛り上がったところで、若手会員の紹介です。八七年卒の大屋佳子さんからは自己紹介があり、現在、学研の教室事業で頑張っているとのこと。教育界より実業界で活躍している卒業生が多くなっていることは、やはり筑波大学の特徴が現れてきているようです。
そしてフィナーレは、筑波大学学生歌「常陸野の」の合唱です。何とこの歌を作曲した飯島睦子監事(大田区立安方中学校長)と混声合唱団OBによる本格的合唱で紹介されました。いつ聞いても品格のある歌です。そして最後に、渡邉副会長のリードによる「宣揚歌」が高らかに歌われ閉会となりました。学んだ場所は違えども同じ歌を歌い、心を一つにできるということは何とも言えない喜びでした。
最後の記念写真も和やかに撮影でき交流会はお開きとなりました。多くの皆様のご協力に感謝いたします。
(事務局長 德田安伸・都立園芸高校長)