- タイトル
- 山人綺譚
- 著者
- 星野雅良(昭32教大文)
- 発行所
- 学校図書株式会社
- 形式
- 新書判 212ページ 1、000円(税別)
著者は評者の畏友であり、学研で学校図書の企画編集に携わった後常務を経て引退、現在に至っている。これまでに「信州・木曽路へ」、「秘境・奥木曽の秘仏と野の仏たち」「木曽――蘇る水源郷」を上梓し、本書で四作目である。
著者は現役を退いた後、故郷の木曽を訪れることが多くなった。故郷は木曾川、御嶽山など豊かな自然に恵まれ、数々の仏閣や野仏を民話とともに残して日本の心を今に伝える景勝の地であり、また懐古の地でもある。そのような自然風土の中で「かつて山に生き、山に還った全ての旧き山人たちへの追慕の念をこめて」、記録と聞き取りを重ねて綴られたのが本書である。山に生き、山に還った人々の生きざまには、そこから生まれた民話とともに人の心に伝わってくる尽きせぬものがある。
昨今の閉塞感に満ちた世知辛い世の中で、本書をひもといて心和む一時を過ごすこともまた楽しからずやである。著者がかつて独文専攻の徒であったことからグリム童話を想起するのも一興であろうか。
紹介文:逸見博雅/昭32教大文(茗渓1076号に掲載)